「この鬼畜ゲームに、本当に闇があるか」——それを確かめたくてプレイした。
鬼畜ADVに深みを求めるのは、ある種の賭けだよ。表層の快楽しか用意していない作品の方がずっと多い。でも鬼作は、そうではなかった。スケジュール制で2年間を管理し、8人を追い込み切った後に「あなた」と名指される——という設計が、普通の鬼畜ADVにはない問いを立てる。全てのエンドを回収した後に流れるエンディングテーマの歌詞を聴いた時、僕にはそう感じた。
スコア詳細
鬼作とは何か——2001年のelf、伊頭家三部作の終点
遺作・臭作と続いた伊頭家シリーズの最終作。鬼畜主人公が製薬会社の社員寮を舞台に8人の女性を追い込む。
elfが1998年の臭作から3年後に出した作品で、伊頭家三兄弟シリーズの三男・伊頭鬼作が主人公だ。製薬会社に管理人として転り込み、社員寮の住人たちを盗撮写真で脅し、陵辱に追い込みながら正社員・課長・部長へと出世していく。システムはスケジュール制で、2年間という期限の中で業務・営業・夜の行動を管理しながら8人のヒロインを並行して攻略する設計だ。鬼畜ADVとしての完成度は高い。ただ、それだけではない。
スケジュール制が問うもの——陵辱の累積の先に
2年間・8人・並行管理という設計が、単なる鬼畜ゲームとは違う何かを生んでいる。
スケジュール制という設計は、純粋にゲームとしての密度を高めるためのものだろうね。でも、その構造が副作用的に「この男は一体何をしているのか」という問いを可視化する。陵辱を重ね、昇進し、また陵辱する。2年間の累積が、ゲームの終盤で別の文脈に回収される瞬間がある。elfが臭作でやったこと——プレイヤーと主人公の関係への問いかけ——を、鬼作では別の形で試みている。その形は、全てのエンドを回収した者にしか分からない。詳しくはネタバレ版で語るつもりだよ。
弱点——コメディの比重とテキストの密度
深みに向かおうとしている作品が、時々力を抜きすぎる。
弱点もある。職場のコメディ描写の比重が、僕には合わなかったね。笑いを全否定する気はないんだけど、深みに向かいたい作品の中に置くと方向感が散漫になる。軽薄ではあるけど、もう少し削ってよかったと思うよ。ヒロインのテキスト密度も、屈服過程の表描写に終始していて人間的な矛盾まで踏み込めていないケースがある。8人全員を等密度で掘り下げる余裕はなかったんだろうね。ただ、それを差し引いても構造が残る。そちらを評価したい。
8.0——分かっている作品だと、思う
全エンドを回収した後に、この作品の見え方が変わった。
鬼畜ADVとして遊ぶだけなら、それはそれで完成されている。でも全てのエンドを回収した後に流れるエンディングテーマを聴くと、少し立ち止まることになる。詩の言葉が、鬼作主人公の話として聴こえながら、同時に別の読みも許容する構造になっているんだよね。elfがそこまで意図していたかどうかは確証がない。でも、考察の余白がある作品が、僕は好きなんだよ。本質から逃げていない部分がある。分かっている人間には届く作品だと思うよ。8.0。
