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波多野瑠璃のレビュー — 鬼作(ネタバレあり)

波多野瑠璃
波多野瑠璃
最年少・中二病
8.0/10
8.0 / 10

エンディングテーマ「芋虫」は鬼作について歌っている——そう思いながら聴いていたんだよ。でも、少女ルートを解放した後で聴き直すと、少し変わってくる。

elfは鬼作というキャラクターに「業」を持たせている。貪り、肥えて、朽ちてゆく芋虫の詩は、鬼畜主人公の自己像として読める。でも意地悪に見れば、この詩を聴いている側の肖像でもある。鬼作は川で少女を救い、あの世へ旅立った。プレイヤーはその様子を外から眺め、何も得なかった。「何も遺さず / 何も得られず / 何も叶わず」——どちらの話かは、最後まで明示されないんだよね。この曖昧さが分かっている人間には届く、と思う。

スコア詳細

闇の深度・テーマ性 8
本質への肉薄 8
考察の余白・構造の独自性 8
人物描写の業・矛盾 6
テキストの密度 6
コメディ要素の処理 5

「鬼作」という闇の質——陵辱ゲームに本当の「業」はあるか

鬼畜ADVに深みを求める人間は少ない。でも、この作品には何かが仕込んである。

陵辱ゲームというジャンルは、表層の快楽を求めてプレイするものだろうね、大半は。世界観の深みとか、構造的な問いとか、そういうものに期待する人間は少ない。だから鬼作に「業」があると言っても、受け取ってもらえるかどうか微妙だとは思う。でも、僕にはあると思うんだよ。鬼畜道を継ぐ伊頭鬼作という男には、表層の陵辱だけでは説明しきれない部分がある。

スケジュール制で2年間を管理しながら8人を追い込むという設計は、鬼畜ゲームとしての密度よりも、「この人間は一体何をしているのか」という問いとして機能する。陵辱の累積が、ゲームの終盤で「あなたは鬼作マスターの称号を得た」という言葉に変換される時——ただの鬼畜ADVとは少し違う何かに触れている、と思うよ。臭作では主人公が終盤でプレイヤーを直接名指した。「今まで俺にあれこれ指図していたのはお前だな?」という形で。鬼作はそれを称号と命令に変換している——「あなた」と名指して実績を確定させ、「鬼作の魂を救え」と命じる。問いの形は違うが、elfがプレイヤーに向けて何かを押しつけてくる構造は変わっていない、と僕は思う。

「芋虫」——これは誰のことを歌っているか

エンディングテーマの歌詞を、少女ルートを解放した後で読み直した時の感触は少し変わる。

「俺は芋虫 貪るだけの / 俺は芋虫 肥えてゆくだけの」。最初に読んだ時は、鬼作のことを歌っていると思ったよ。女性を次々と屈服させ、昇進を重ね、貪り、肥えてゆく男。それ以外の何者でもないだろうね。「ずるずると血膿のぬめる肉塊 / ああ 朽ちてゆく 朽ちてゆく 朽ちてゆく」——鬼畜主人公の末路の詩として読める。

でも、少女ルートの文脈で聴き直すと少し変わってくる。プレイヤーは「鬼作の魂を救え」という命令を受け、条件を満たし、少女エンドを解放した。そして鬼作が川で少女を救い、溺死し、あの世へ旅立つ様子を——外から眺めた。「何も遺さず / 何も得られず / 何も叶わず」。これ、プレイヤーの状態にも重なる構造だよね。救済を完成させる手段として機能したのに、救済そのものには与れなかった。鬼作だけが旅立った。プレイヤーは称号を受け取り、命令を実行し、それで終わりだ。「俺はお前でお前は俺なんだよ」——鬼作のキャッチフレーズは同一性を最初から宣言している。それなのに救われるのは鬼作だけ、という落差がある。

……意地悪な読みをすれば、「俺は芋虫」はプレイヤーへの問いかけでもある。鬼畜ゲームをプレイし、8人を追い込み、「あなた」と名指しされ、命令に従って少女エンドを解放した。何を得たか。「ああ 堕ちてゆく 堕ちてゆく 堕ちてゆく」——鬼作の肉欲の詩として聴ける。同時に、それを操作していた存在への詩としても機能しうる。elfがそこまで意図していたかどうかは分からないんだけど、この曖昧さはそのままにしておきたいと思う。考察の余白がある、というのは、こういう状態のことだよ。

弱点——コメディの比重と密度の問題

深みに向かいたい作品が、時々力を抜きすぎている。

ここまで語っておいて、弱点もあるんだよね。コメディ描写の比重が、僕には合わなかったね。部長周りのゆるさや、職場でのスラップスティック的な展開は「軽薄ではあるけど」と言い続けるには比率が高い。笑いを全否定する気はないんだけど——軽薄ではあるけど、深みに向かおうとしている作品の中に置くと、方向感が散漫になる。もう少し削ってよかったと思うよ。

テキストの密度も、現在の目で読むと薄い部分がある。ヒロインの内面が「追い込みに屈服する過程の表描写」に終始していて、業や人間的な矛盾まで踏み込めていないケースが多い。翔子あたりはほぼそれだね。深みを求める読者に報いる密度かと言われると……まあ、「そこまでは期待しない方がいい」というのが正直なところだよ。ただ、それを差し引いても、この作品が持っている構造は残る。8.0は動かない。

8.0の総評——分かっている作品だと、思う

全エンドを回収した後、あの歌を聴き直した。

全てのエンドを回収した後に開放される少女ルート。その後に流れる「芋虫」。elfがそこまで考えていたかどうかは、分からない。でも、「これは芋虫のことを歌っているのか、それとも聴いている僕のことを歌っているのか」という問いを立てさせる構造が、この作品にはある。本質から逃げていない部分がある。それだけで、軽薄な作品とは言えないんだよね。……分かっている人間には届く作品だと思う。8.0。