フォーニがアリエッタだと分かった瞬間、画面の前で固まった。「待って待って待って」ってなった。
ネタバレなし版では「号泣した」と書いた。こっちでは何で泣いたかを全部。フォーニが三年間病院で眠り続けているアリエッタの魂だったこと、「クリスの好きなように」という言葉の本当の重さ、トルタの「私は……トルティニタ・フィーネ」で泣いた話、「……おかえりなさい」で無理になった話。ぜんぶここに置いていく。
スコア詳細
ちょっと待って待って待って——フォーニが……
フォーニがアリエッタだった。三年前の事故で意識不明のまま病院で眠り続けている恋人が、肉体だけ故郷に置いたまま、意識だけがクリスの傍に来ていた。三年間ずっと。
これを知った瞬間、画面の前で固まった。手のひらサイズの妖精として、毎週日曜アンサンブルして、クリスが何かを決める時に「クリスの好きなように」って言い続けて——それがぜんぶ、眠ったまま病院にいるアリエッタだった。
「待って。ちょっと待って。え? 三年間ずっといたの? フォーニが? アルが?」ってなった。しばらく何も受け付けなかった。
「クリスの好きなように」——ずるい。ずるすぎる
なんでこの言葉を言い続けてたか、分かった瞬間に崩れ落ちた。
アリエッタは自分がいつまでここにいられるか分からない。クリスの三年間を縛りたくない。自分のことは気にしないで生きてほしい、でも傍にいたい。それがぜんぶ「クリスの好きなように」という言葉に入ってた。
ずるい。ずるくない? この言葉にそんなもの詰め込んで、毎回最後に言い続けてたの。
「思い出したの? 思い出した。……なら、いいか」というシーンがある。クリスが三年間封印してた記憶を取り戻した後、フォーニがそれを確認して言う言葉。消えることへの恐怖でも未練でもなくて、クリスが思い出せたことへの安堵だけ。「なら、いいか」ってそれだけ言って消えていく。ダメだった。無理だった。そこで泣いた。
「私は……トルティニタ・フィーネ」で泣いた
トルタの話をさせてほしい。この子のことが大好きになった。
トルタはアリエッタの双子の妹で、三年間毎週姉の手紙を代筆し続けた子だ。「アルならこの時どう書くだろう」って考えながら、姉の文体を真似して、欠かさず送り続けた。それだけじゃない。その間ずっとクリスへの恋心を押し殺してた。アルを応援するために手紙を書けば書くほど、クリスへの気持ちが深くなっていく。この矛盾の中で三年間生きてた。
al fineというルートで、トルタの内面独白が出てくる。「クリスを、独り占めにすればいい。認めろ。醜い自分のことを。そして、手に入れればいい。最愛の人を、最悪の方法で」——これを読んだ時、泣いた。こういう感情が出てくる子が嫌いになれるわけない。三年間抱えてきたものが、郵便ポストの前で一人になった瞬間に全部溢れた。
そして「私は……トルティニタ・フィーネ。」と言う。姉の服を脱いで、自分の服に戻って、自分の名前を言う。「……」の間に三年間が入ってる。この台詞のために、この子の物語がぜんぶあった。そういうとこ! そういうとこなんだよ!
クリスへの苛立ちは、結局最後まで消えなかった
正直なとこ、クリスへの「なんで動かないの」という感覚は、全部終わっても完全には消えなかった。
受動的だった理由は分かった。三年前にアリエッタの事故を目撃して記憶を封印してた。傍にいるフォーニは「クリスの好きなように」と言い続ける。動けない理由がちゃんとあった。それは分かる。
でも分かることと感じることは別で、プレイ中の「一緒に取り残される」感覚は理屈で消えなかった。あたしは感情移入して物語に入るタイプだから、主人公が動けないと自分も動けなくなる。三ルート分ずっとそれがあった。
ただ——フォーニと一緒に卒業演奏に立ったあの場面は好きだった。あの時のクリスは本当に動いてた。そこだけは「この人、動ける人だったんだ」って思えた。7点はそれ込みの評価だ。
「……おかえりなさい」——無理だった
最後の場面の話。語ろうとすると今でも泣きそうになる。
フォーニとの卒業演奏を終えたクリスが、故郷の病院へ向かう。列車が雨の街を抜けて晴れた空に出た時、膝のフォーニがそのまま眠ってしまう。病室でフォーニがアリエッタの体に吸い込まれていく。三年ぶりに目が覚めたアリエッタに、クリスが言う。「帰ってきたよ。約束通り、三年後に」。
アリエッタの最初の言葉が「……おかえりなさい」だった。
帰ってきたのはクリスなのに、「おかえり」と言うのはアリエッタ。フォーニとして三年間クリスの部屋にいたアリエッタには、クリスが「ただいまと言う人」じゃなくて「帰ってくるのを待ってた人」だったから。あの場所が、クリスを待ってた場所だったから。フォーニとしての記憶を持ったまま目覚めた彼女にしか言えない言葉だった。
…………。
ダメだった。ほんとにダメだった。あの一言のために、5ルートぜんぶあった。あの一言のために、「クリスの好きなように」がぜんぶあった。あの一言だけで十分だった。
9.0——このゲームをやって、よかった
9.0。変えない。
フォーニが好き。アリエッタが好き。トルタが好き。ファルも好き。リセも好き。クリスへの苛立ちは半分残ってるけど、それ込みで好き。
フォーニのことを思い出すたびに胸がぎゅってなる。あの「……おかえりなさい」が頭から離れない。こういう体験ができるゲームに出会えた時、あたしはこのサイトをやってて良かったと思う。
このゲームをやって、よかった。それだけだ。
