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波多野瑠璃のレビュー — 好き好き大好き!

波多野瑠璃
波多野瑠璃
この作品に、闇はあるか
7.5/10
7.5 / 10

偶像化と不能が同じ場所にある。その構造が、この作品の闇の核心だよ。

クリア後に、改めて。主人公が蒲乃菜に直接触れられない理由、みるくというキャラクターの裏側、10個のBADを積み上げた先に何があるか。ネタバレなし版では話せなかった部分を、ここで全部開く。7.5という評価は変わらない。ただ、その根拠の深い部分は、クリアしないと見えない場所にある。

スコア詳細

テーマ・メッセージ性 8
世界の奥行き 5
雰囲気・没入感 9
文章力・描写力 7
作品の尖り 9
エンディングの満足度 7

クリアしてから来てほしかった。そういう作品だよ

ネタバレなし版で「プレイしてから読んでほしい」と書いた。ここはその続きだよ。

主人公の欲望の核心には本当に面白いものがある、と書いて止めた。その部分を開く。主人公がなぜ蒲乃菜に直接触れられないか。蒲乃菜が物語の中でどう変容するか。木更津みるく——大学の後輩で、陽気で押しの強い女性なんだけど——そのキャラクターの裏側に何があるか。そして10個のバッドエンドを積み上げた先に、何が待っているか。

評価は7.5で変わらない。ただ、その7.5のうち深い部分は、全部ここに集まっている。

主人公が蒲乃菜に触れられない理由——物語の核にある心理だね

この作品の最も深い場所は、エロシーンの中にある。

序盤に一つの場面がある。主人公が蒲乃菜の部屋に忍び込み、彼女のラバーマスクの内側を舐める。ゴムの味と、蒲乃菜の体液の味が混ざる。そこで興奮しようとするが、勃起しない。

主人公は蒲乃菜を監禁した。ラバースーツで包んだ。全身をゴムで覆った「完璧な偶像」として手元に置いた。なのに、蒲乃菜本人に触れようとすると、主人公の肉体がそれを拒否する。「汚してしまえば、完璧な偶像ではなくなる」という恐怖が、欲望よりも深い場所にある。欲望が自分自身によって完結を拒否されている状態だね。

これが物語の核にある心理だろうね。エロゲーの主人公がメインヒロインに対してHが成立しないという逆説を、欲望の構造として書いた。本質に触れているだろうね。ラバーフェチという設定をお飾りにしなかった理由がここにある。

蒲乃菜はどう変容したか、そしてED1の答えについて

蒲乃菜の変容プロセスを、この作品は丁寧に書いた。

最初は恐怖だ。次に混乱が来る。そして「なぜ私なのか」という問いが中心に現れる。主人公との奇妙な均衡が生まれていく過程が、少しずつ積み重なっている。彼女が単純な被害者として固定されないところが、この物語の誠実さだと思う。

合意SEXの場面、蒲乃菜が「私、あなたなら…恥ずかしくなんてないよ」と自らラバースーツを脱ぐ瞬間は、この積み上げの果てにある。偶像が崩れた瞬間でもある。その直後に主人公は逮捕される。「偶像が崩れた瞬間に物語が終わる」という流れは、意図的だと思うよ。

そしてED1の結末を読んだ時、少し黙ってしまった。

ED01のタイトルは「蒲乃菜、ラバーフェチに」。主人公が逮捕された後、蒲乃菜はその地下室に何度も戻り続ける。ラバースーツを脱がずに。男の帰りを待つようにして。

加害者の執着が、被害者に感染した。そういう話だね。これが「歪んだ純愛」というプレイヤーの読み方の、一つの根拠になっている。蒲乃菜が主人公に感染させられたのか、それとも彼女の中に元々あったものが引き出されたのか。答えは作品が出してくれないだろうね。考察の余地として、残されている。

軽薄には見えないだろうね。むしろ、静かに恐ろしい話だと思った。この闇の質は本物だね。

みるくは、軽薄だと思っていたよ

正直に言ってしまうと、木更津みるくというキャラクターを、最初は軽薄だと思っていた。

陽気な後輩。押しが強い。主人公に好意を持ち積極的に関わってくる。物語の中でも「軽い存在」として機能している時間が長い。表面上はそう見える。

ただ、あるルートを読んだ時に、そのキャラクターの別の顔が出てきた。

ED06のタイトルは「みるくに殺される」。

みるくは主人公をナイフで刺す。その直前に言った言葉がある。「あたしならこんなナイフを使わなくても先輩の全部を、受け入れてあげられたのに」。

……重い。想像していた重さではなかった。

軽薄に見えた陽気さの奥に、これだけの欲望と怒りがあった。主人公が蒲乃菜に向けた執着を、みるくは隣から見ていた。「なぜ私じゃないのか」という感情が、ここまで煮詰まっていた。

軽薄ではあるけど、と言いかけた自分の見誤りだった。軽薄な顔の裏に、これだけの闇を抱えていたキャラクターを読めていなかった。この一行が、みるくというキャラクターの全部を書き換えた。……分かっている作品だと思ったのは、このシーンを読んだ時だった。サブヒロインにここまでの暗部を持たせた。それが作品の尖り9の根拠の一つだろうね。

10個のBADエンドを積み上げた先に、何があるか

この作品のエンド群は、意図を持っている。

全11エンディング。そのうち10個はBADエンドで、全てを体験しなければ最後の一つ——ED11が解放されない。積み上げること自体を求める仕掛けだね。10の闇を経た後に見えるものが、この作品の着地点として用意されている。

ED7も印象に残っている。天童瑠香——主人公の幼なじみで、男勝りで気の強い陸上選手なんだけど——彼女が死んだ翌朝、もう一人の幼なじみ藤堂莉果——瑠香の従妹で、対照的にもの静かで体の弱い少女——が主人公の部屋に現れる。自ら全裸になって求めてきて、「もっとちょうだい!」と激しく感情を爆発させた後に、ぽつりと言う。「これであたしも瑠香ちゃんといっしょ」と。瑠香と同じ体験をするために、自発的にそこまで来た。その動機の歪みが、このルートの闇だろうね。莉果の感情の持ち方は、サブヒロインの中では最も複雑な部類に入ると思う。

ED11自体の内容は、ここでは語らない。ただ、10個の闇を経た後に読むことに意味があると思う。この作品は順番を求めているのだと思う。その要求に応えた読者だけが見えるものがある。……エンディングの満足度を7にした理由は、ED11だけを見た時の感触と、10個を経た後の感触が、かなり違うからだね。

Hシーンが物語と繋がっている——この作品の誠実さがそこにもある

Hシーンを物語として読んだ時の話をするよ。

ラバーマスクの内側を舐めて勃起しない場面は、エロシーンの体裁を持ちながら、本質的には心理描写だろうね。主人公の欲望の構造を、行為の失敗という形で書いた。この場面がなければ「偶像化」という概念は単なる言葉で終わっていた。体験として示したことに意味がある。

みるくの長尺妄想シーンも、物語から切り離された単独のエロではないだろうね。現実のみるくへの欲望と、主人公が蒲乃菜に向ける偶像化の差が、妄想というフォーマットの中で滲み出ている。なぜ妄想の中でしか展開できないのか、という問いが残る。

蒲乃菜との合意SEXがED01の冒頭にしかないという配置も、物語の論理から来ている。偶像が崩れた瞬間にしか合意は生まれない。その瞬間が逮捕の直前に置かれている。Hシーンを物語の流れと接続した痕跡が、この作品には読み取れる。……エロと物語の相乗効果として評価できる数少ない1998年作品だね、と思っている。

7.5——10個の闇の先に、この作品の着地点があった

クリアした上での、7.5だよ。

主人公の偶像化と不能は物語の核にある。蒲乃菜の変容は丁寧に書かれた。みるくED6の「あたしならこんなナイフを使わなくても先輩の全部を、受け入れてあげられたのに」という一行は、このゲームで最も重い言葉だと思うよ。ED7莉果の歪んだ動機も、サブヒロインとして十分な闇の質がある。ED11への道筋は10の闇を経ることを求めた。それが誠実な要求だと思う。

弱点も変わらない。サブヒロインルートの密度が全体的に薄い。みるくはED6で大きな力を発揮したが、他のルートでの描写は薄い。瑠香については、もう少し掘れた余地があったと思う。世界の奥行きも心理的な密室に限定されている。

……でも、これだけの心理的な深さを1998年に作った事実は、評価に値するだろうね。

偶像化と不能が同じ場所にある。蒲乃菜がラバーフェチになった。みるくがナイフを握った。10個の闇の先に、この物語の着地点があった。闇の質は本物だよ。7.5。

— 波多野瑠璃