ネタバレゾーン — 遺作
このゾーンにはネタバレが含まれます。
旧校舎に閉じ込めた黒幕が用務員・伊頭遺作であること・主人公の小暮健太は加害者ではなく脱出と目撃の側であること・1年前の妹殺害事件の真犯人が遺作本人であること・親友の島田陣八が脅迫下の共犯だった経緯・遺作が理事長の不正を握って守られていた事情・蘇我宗光の顛末・放火による焼殺計画・全9エンディング(焼死バッド/時計台での捕縛/生還グッド/後日のビター/琴未と美由紀それぞれの恋愛成就)の構成など、本作のすべてのネタバレを含みます。未プレイの方はまず作品トップページをご覧ください。
黒幕・伊頭遺作の正体と目的は何か?
伊頭遺作は桜蘭学園の旧校舎で働く用務員です。約20年前までは小学校の教師でしたが、問題を起こして免職になった過去を持ち、女子トイレの覗き・女子の体操着や水着の窃盗・女子生徒への抱きつきなどを繰り返してきた常習的な性犯罪者です。「いつも自分が被害者」という被害妄想と、女子生徒に侮蔑されたことへの私怨、そして性欲を行動原理に、9人を旧校舎に閉じ込めて一人ずつ連れ去り凌辱する事件の唯一の能動的な加害者・黒幕です。自分の犯行を誰かに見てもらいたいという歪んだ顕示欲があり、すべての凌辱を8ミリビデオに録画して残していきます。
1年前の妹殺害事件の真相は?
1年前、榊美由紀の妹が殺害される未解決事件がありました。妹は陣八の隠れた交際相手で、遺作に命じられた陣八が彼女を呼び出した際、抵抗されてもみ合った末に頭を打って気絶します。遺作は「死んでるじゃねぇか、こいつ」と告げ、陣八に「自分が死なせた」と思い込ませました。しかし時計台で遺作自身が明かす真相では、妹を実際に殺したのは遺作本人で、気絶した妹をケーブルのような物で絞殺していたのです。陣八は人を殺してはおらず、この一年間ずっと「殺人犯」という嘘の罪悪感で人質に取られ続けていたことになります。この事件が陣八を共犯に縛り、美由紀を男性不信に陥らせた、すべての根本原因です。
主人公・小暮健太は加害者ではないのか?
はい。本作の主人公・小暮健太は、一連の凌辱の加害者ではありません。健太自身もワープロ製の差出人不明の手紙で旧校舎に呼び出され、他の生徒や担任教師とともに閉じ込められた被害者の一人です。楽天的で好奇心が強く、推理小説とパソコンに親しむ少年で、機械油や鍵を集め、形状記憶合金の鍵などの仕掛けを解きながら、5階から下の階へと脱出路を探っていく役回りです。遺作の犯行は、健太が視聴覚室の8ミリビデオ越しに目撃する形で提示されます。健太によるヒロインとの合意の場面も存在せず、彼は終始「脱出を図り、仲間を救おうとし、犯行を目撃する側」に置かれています。生還エンドでは仲間の名誉を守るため、陵辱の証拠ビデオを警察に渡さず焼却します。
共犯・島田陣八とはどういう人物か?
島田陣八は健太の3年来の親友で、新聞部の部長です。お茶目でノリがよく、健太を「学園最後の夏休みに思い出を作ろう」と誘い続ける明るい人物として登場しますが、その裏で遺作の共犯者になっていました。経緯はこうです。新聞部の活動で理事長室に仕掛けた盗聴器を外しに行った際、遺作に同類と見抜かれ、同時に理事長が学校の金を使い込む不正を知ってしまいます。退学と逮捕をネタに脅迫され、女子の盗撮・体操着の窃盗・呼び出しの手紙の配布・扉への《怨》の字書き・連れ去りの運搬役を担わされていました。さらに1年前の妹の件で「自分が殺した」と信じ込まされ、二重に人質に取られていたのです。真相が露見すると号泣しながらすべてを告白し、健太に時計台への鍵を渡します。生還エンドでは健太を裏切れず、自首を決意します。
視聴覚室の8ミリビデオが示すものは何か?
遺作は連れ去ったヒロインを凌辱する様子をすべて8ミリビデオに録画し、視聴覚室のデッキにテープとして残していきます。これは「自分がした事を、誰かに見てもらいたくて仕方がない」という遺作の歪んだ顕示欲の現れであると同時に、ゲーム上は健太(とプレイヤー)が真相に近づくための情報源にもなっています。ビデオの中で遺作は「このビデオを、健太のガキが見てるんだよ」と画面越しに健太を名指しで挑発します。なお本作のHシーンは、性交の逐語的な描写を抑え、拘束された姿の発見・ビデオ断片のセリフ・事後の放心といった間接的な手法で凌辱を示唆する作りになっています。このビデオを健太がどう扱うか(生還エンドでは焼却して仲間を守る)が、彼の倫理を象徴する選択になります。
扉に記された《怨》の字の意味は?
旧校舎の各階の扉には、赤いペンキで《怨》の字が書かれています。閉じ込められた一同にとっては、館の主のような何者かの悪意と恐怖を象徴する不気味な印として機能します。しかし美由紀の推理によって、この《怨》の字も、黒板に書かれた数字なども、共犯者である陣八が遺作の指示で書いたものだと見抜かれます。つまり超常的なものではなく、恐怖を演出して被害者を心理的に追い込むための、人為的な仕掛けの一つだったということです。本作が「人間しか出てこないホラー」と評される理由が、この種の演出にも表れています。
閉じ込めの仕掛けはどうなっていたのか?
登校日の夕方5時、健太・陣八・里香・美緒・明美・美由紀・琴未・蘇我宗光・担任の高島久美の9人が、それぞれ別々の手紙で旧校舎5階の音楽室に集められます。全員が揃った直後にチャイムが鳴り、扉が施錠され、窓には外から板が打ちつけられて、閉じ込められたと判明します。美由紀の推理によれば、音楽室は最初から施錠されていたわけではなく、最後に入室した陣八がチャイムを合図に扉を開け、外から遺作が施錠したという段取りでした。鳴るはずのないチャイムも、《怨》の字も、すべて事前に仕込まれた人為的な演出だったわけです。健太はここから、各階の施錠された扉を鍵とアイテムで一つずつ解錠し、5階から1階へと降りていきます。
遺作が理事長の不正に守られていたとはどういうことか?
遺作はかつて教師を免職になった人物でありながら、桜蘭学園の用務員として留まり、数々の問題行動を起こしても解雇されずにきました。その理由が、理事長(蘇我宗光の父)の不正を握っていたことです。理事長は学校の金を使い込んでおり、遺作はその弱みを盾に「俺が捕まれば、理事長もおしまいだからねぇ」と語るほどの傲慢な安心感を持っていました。つまり遺作と理事長は、互いの弱みを握り合う共生関係にあったのです。陣八が共犯に堕ちたきっかけも、この理事長の不正を盗聴で知ってしまったことでした。生還後の後日談では理事長が犯罪者となり、その結果として息子の宗光も学園を退学することになります。
蘇我宗光の顛末はどうなるのか?
蘇我宗光は桜蘭学園の理事長の息子で、一人だけ白い特別な制服を着る御曹司です。傲慢で我儘、嫉妬深く、琴未の幼なじみとして彼女に執着しています。男性であるため遺作の凌辱の対象にはならず、「目障りだから」という理由で放送室でロープと猿ぐつわに拘束されているのを健太が発見・救出します。ただしビデオの中では、遺作に操られて高島先生との強制性交や里香への口奉仕の強要に利用される加害の道具にされてしまいます。生還後も虚勢を張りますが「蘇我家始まって以来の恥辱」として精神的に崩壊し、後日談では父である理事長の不正が露見して犯罪者となり、宗光自身も退学に至ります。父の不正そのものは、最後まで知らないままでした。
遺作の最終計画と、各エンディングの違いは(全9種)?
遺作の最終計画は、保健室のベッドにガソリンを撒いて旧校舎を放火し、共犯の陣八ごと全員を焼死させたうえで「生徒が肝試しをしていてロウソクの火がカーテンに燃え移った失火」に偽装する、というものでした。エンディングは収録ファイルこそ10本ですが、実際の結末は9種に分かれます。内訳は、脱出に失敗して炎に包まれる焼死バッド(ENDING1・3。ENDING1では明美が給食室で焼死する)、時計台で単独行動や対決に失敗して捕縛される捕縛・分岐バッド(ENDING2・4・5。柱に縛られ放火の焼殺へ接続)、美由紀の機転で遺作を扉際まで後退させて脱出に成功し遺作が変死体となる生還グッド(ENDING6)、2学期に仲間が次々と学園を去り再び差出人不明の手紙が届く後日のビター(ENDING7)、そして半年後に琴未と結ばれる成就(ENDING8)と、男性不信だった美由紀と結ばれる成就(ENDING9)の恋愛成就2種です。
謎解きを進めるほどHシーンが減るというのは本当か?
本作はキャラ別の恋愛ルートではなく、旧校舎を5階から1階へ降りる探索進行と、クリア状況・選択による多重エンドで構成されています。その中核にあるのが、謎解きに成功してヒロインを遺作から救えるほど、そのヒロインの陵辱ビデオは解放されないという逆説的な設計です。逆に言えば、Hシーンを見るためには、謎解きに失敗してヒロインを見殺しにする必要があるということになります。この構造はプレイヤー間で長く語り草になっており、プレイヤーに「自分の選択が被害を招いた」という共犯者的な意識を植えつける仕掛けとして批評的に語られます。クリアを目指す行為とHシーン回収が相反するという、当時としても独特の作りです。
本作が「鬼畜系の先駆け」とされる構造的特徴は何か?
遺作は1995年、恋愛アドベンチャーが主流だったエロゲ市場に「監禁ホラー脱出ゲーム」という異色のジャンルを持ち込んだ先駆的作品で、後続の伊頭家シリーズ(臭作・鬼作)や鬼畜系作品全般の礎を築いたと位置づけられています。構造的な特徴は三つあります。第一に、クリーチャーではなく「学園の用務員」というどこにでもいる人間を恐怖の源泉に据え、その犯行のプロセスや心理を書き込んで人間の恐ろしさを描いたこと。第二に、主人公を加害者ではなく目撃者・脱出者に置き、凌辱を直接描写ではなくビデオ越しの間接手法で提示したこと。第三に、前述の「謎解きを解くほどHシーンが減る」逆説設計で、プレイヤーを物語の共犯者的な立場に引き込んだことです。これらが組み合わさり、単なる凌辱ものを超えた、ゲーム性とテーマ性を両立する作品として古典名作の地位を保っています。